作家生活オンライン > いるまがわのブログ
 タイトルから外れるけど、例の広告を貼ってお小遣いを稼げる投稿小説サイトについて書く。
 「YOUは小説家」というあのサイト、実はリニューアルの為に閉鎖になっていたのだ。一か月も! いやあ、世間から忘れられるのには十分な時間だ。
 でもまあ、今月無事に新装開店にこぎ着けたらしい。運営母体がどーとか書いてあったが、一番の理由はスマホで読めるように全面改装したそうだ。普通はギリギリまで営業するものだが……。
 新しい名前は「作家生活オンライン」という。
 大人しくてふさわしい名前なので私はこっちの方が好きだ。好きなのだが、しかし……! 実のところそういう感覚では駄目なのである。
 私のようなオッサンに好かれるようでは駄目だ。「こんなの恥ずかしい」ぐらいの方が客は集まるのである。記憶が曖昧だけど初期の「小説家になろう」では投稿者名に「○○先生」と表示されていたと思う。あざとすぎて恥ずかしくて笑ってしまうぐらいで丁度いいのである。


 さて、本題。

 諸事情があってネットサーフィンしていたら、下のようなサイトを見つけた。
   ↓
http://www.creatorsworld.net/index.php
「クリエイターズワールド」

 一見すると小説投稿サイトか何かみたいに見える。が、実は違う。
 実は「自費出版サイト(?)」なのだ。
 自費出版というと、文○社のような老舗から大手や中小の会社とか、最近は朝○新聞社までやっている。もう、商売になるなら何でも参入しないと生き残れない時代らしい。このあたりは連載中の林真理子「マイストーリー」が内幕を書いていて面白い。
 でもそれはあくまで「現実世界」の話で、立派な本を三百万円で一千部刷って、ルートがあるなら書店に並べてあげる商売だ。

 もちろん、ちょっと同人誌の知識がある人ならば、そんな大ごとにしなくても、三万から五万で簡素な本を百部作るだろう。ワープロ一丁あれば普通に出来る。そして同じく某ワープロソフトがあれば、「電子書籍同人誌」もわりとあっさり出来てしまうのである。これならばネット上で好きなだけ販売できる。(そうそう売れないとは思うが)
 だがしかし、作家という人種はそんなことでは満足しないらしい。
 上の「自費出版サイト」では、「紙の本」を派手に宣伝してくれる。本の出版と、ネット上の宣伝と通販を組み合わせた商売をやっているのだ。

 宣伝手段として用意されているのは、まず「作品イメージムービー」だそうだ。FLASHで作って十秒間流してくれる。それから作品紹介作者紹介などは当然として、Q&A方式で読者に代わって作者の創作の秘密に迫るそうだ。なんか私も自分のサイトにかなり痛いことを書きっぱなしなのを思いだした。明日にでも削除しよう。
 もちろん日記も書けるし感想も受け取れる。販売中の本を顧客にネットで「立ち読み」させることもできるという寸法だ。

 追加料金を払えば、プロのライターが作品の本格的なレビューを書いてくれる。さらに作者のあなたへのインタビュー記事まで対談形式で作成してくれるのだ。また、書き散らした未発表作品とか恥ずかしい過去のイラストを展示して、作者の世界を存分に顧客に伝えることも可能。
 そしてアルバイトでも雇うのだろうか、百人の読者からの感想・書評もやってきて一挙掲載されるといううれしい仕組みまである。まさにお金次第で至れり尽くせりだ。

 ちなみに料金はこんな風になっている。
   ↓
http://www.creatorsworld.net/tour/index05.html
 お金を払えば払うほど広告が増えていく。だが、肝心の本の費用や部数が書いてないのが謎だ。基本料金に入っているのか、まさかこれ以外に制作料金を取るつもりなのか。
14.10.12 23:14 コメント(0)

 以下は某作家さんへ向けて書いた文章だ。
 わりと古いもので2010年7月1日とある。
 今回、「作家生活オンライン」新装開店を記念して、公開してみる。
 電子書籍についてなのだが、結構、幅の広い話だと思う。

   ******* *******


> 例えば、ニコニコ動画が出来て音楽や映像作品を公開してフィードバックを
> 得られる場所が出来たことで、そっち方面のアマチュア作家は結構ハッピー
> になったと思うわけです。
> 見た人からのフィードバックがうれしいというのが重要っぽい。
>
> ところが、原稿をアップロードして「電子書籍」という形で公開し、
> それについてのコメントが得られる仕組みが用意されたとしても、
> どうも文章系のアマチュア作家はみんながみんなハッピーになるわけでは
> ないような気がする。
>
> だけど、ハッピーになる人ととそれでは満足出来ない人の両方がいて、
> 単に数の問題がまだ見えてきていないだけなのかが分からない。
>
> という感じで、もやもやが増える今日この頃です。



 えー、ちょっと考えてみます。
 SNSで、小説をネット公開する方法を聞いている人がいまして、それについて、「自作をネット公開するメリットは?」と真剣にツッコんでる人がおりました。
 世の中には自作を公開したくない、読んで欲しくない人が実在するわけです。そういう人は作家になることが目的なのであって、小説を誰かに読んでもらうことが目的なのではありません。その種の人を、ここでは仮に「右翼」と呼びます。
 右翼にとって、ネットで自作を読ませるなどということは、大事の前の小事です。作家になれば何万人もの読者を得るのですから無理もありません。その右翼こそが日本の素人作家の保守本流だと思います。

 一方で、こんな人もいます。
 日記とか投稿サイトに、長編小説の第1部第一章の冒頭部分二十数行をアップして、「読んで読んで」「感想ください」という人です。
 読んで感想ったって、二十行しかないだろう、とは思うのですが、そういう人はコメントをもらうと大喜びです。仮にそういう人を「左翼」と呼びます。
 左翼の中でも極左とでも言うべき人は、(いるかどうか知りませんが)ツイッターで小説をつぶやく人です。もはや小説というのは現象に過ぎない。波が広がるがごとく、言葉が伝わっていけばそれでよい。その人にすれば、作品など、残すとか残さないとか、そういう物ではないわけです。

 この、左翼と右翼を両端として、線分上のどこかに、たいていの素人作家は存在するわけです。「何か崇高な動機で執筆してる人」という例外があるとは思いますが、ここでは考えないことにします。
 線分上では特に断絶などはなく、グラデーションのように、「左翼がかった人」や「右翼がかった人」がいるわけです。

 では、電子書籍のような発表媒体が増えて、ハッピーになるのはどんな人でしょうか?
 当然、左翼がかった人です。「読んで読んで」と「レスポンス」に喜ぶのは左翼です。
 私は左翼に属する人間なので、ここからは、左翼から見た右翼像の話になります。

 今のところ、右翼は電子書籍ではハッピーになりそうもありません。しかしながら、事態を複雑にしているのは、電子書籍という媒体が右翼と親和性があるのではないかということです。
 それはこういうことです。今までのケータイやらネット公開と比べて、電子書籍はローカルに落として曲がりなりにも書籍という形をとる点が違います。
 左翼にとっては、どこが違うの? ってなもんですが、右翼にとっては作品が読者に所持されるという事は、大きな意味を持つでしょう。

 右翼はネットで作品を読んでもらいたいわけではないと書きましたが、右翼が求めるものは、アイデンティティーの確立であり、自己実現です。ありていに言えば、作家という人種になりたいのです。それは、ネットで小説を書いて読ませる人とイコールではありません。
 その右翼を電子書籍でハッピーにするには、例えば、電子書籍大賞のような賞を設け、「あなたは作家になりました」というお墨付きを与えることです。
 また、次世代EPUBで、縦書き表示がサポートされて、より書籍らしくなれば、風向きががらりと変化して右翼が参入、ハッピーな人が増えるという事になるかもしれません。

 しかし右翼が右翼でいるかぎり、「みんなハッピー」には決してなりません。右翼というのは、作品が読まれることではなく、特別な人間であることを自分で確認することにより、ハッピーになるのです。ということは必ず、ハッピーになる人間となれない人間が出ます。

  ※(中略)

 右翼と左翼の勢力を考えると、現在多くの素人作家は圧倒的に左翼でしょう。その数は時代を下るほど増えていると思います。しかしながら、性質上、質の高い作品を生み出すのは、少数の右翼の方かもしれません。このあたりは何とも言えないです。右翼は作品を公開したがらないのですから。


 *******    ******

 この文章から四年たった。
 ツイッター小説はとっくに実在し、ツイッター競作イラストまであるご時世だ。
 電子書籍は某ワープロソフト等であっさり作れるようになり、普通にインディーズ出版されている。それでも売れてるのは出版社が出しているプロの電子書籍なのだが。
 ラノベレーベルでは今や投稿小説サイト出身の作家がかなり出ている。ネットで読んだファンにイラストをつけた本を売るのは手堅い商売になるからだ。

 そして、この「作家生活オンライン」の登場となったのである。
 がんばれ運営者!
14.10.10 22:24 コメント(0)

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