作家生活オンライン > いるまがわのブログ
 ネット小説の世界では、大昔は個人でサイトを作って読んでもらうのが主流だった。大昔といっても五年から十年ぐらい前だろうか。
 今でもあるけど、それらネットに散らばってる小説にリンクを張ってもらい、ジャンルごとやランキングをつけて紹介するサイトも現れた。それにより、ネット作家は一定の読み手を期待できるようになったわけだ。

 個人サイトはゆっくりと下火へ向かうが、平行して小説投稿サイトという文化が広がっていった。その名の通り、作者が書いた小説をウェブ上の掲示板みたいなものに投稿して、読者に読んでもらうのだ。
 実はこの小説投稿サイトはざっくり言って二種類ある。
 一つは小説修行の場、といった性格の強い場所だ。お互いに読んで感想を書きあって、よりよい作品を書く技術の向上を目指す。参加者はそれが主目的だった。貴重な場ではあったが、そういうサイトは今ではほとんど廃れてしまった。

 もう一つは単純に作品を公開して、とにかく読者に読んでもらおうという場所だ。
 この種のサイトは、それなりの集客と広告収入が見込める。したがって、個人の趣味からベンチャービジネス、あるいは謎の出版社の暗躍まで、激烈な競争を行った。のちには「電子書籍」という言葉を使うところさえ現れた。専用のビューワを開発して縦書きで読ませる場所まで出たから、そう呼びたくなるのも無理はない。

 だが、誰でも知ってるようにネットは寡占化する。小説投稿サイトの利用者は「小説家になろう」へ一極集中していった。
 理由はいくつかある。私が思いつくのは、アクセス解析が充実していたこと、執筆環境のない人でもエディタが使えたこと、いち早くケータイにも対応したこと、PDFにも対応したこと、そんなところだろうか。
 あと、一番大きいのは、利用者の多いところには利用者が集まるという法則だ。現在の登録作品数と利用者数を調べたら、「258,906作品、455,616人」とある。様々な投稿サイトが、現れては消え現れては消えしていったが、「なろう」の牙城を崩すことはできなかった。

 風向きが変わったのは、DeNAとドコモが立ち上げた、「E★エブリスタ」の台頭らしい(実はあまりよくしらない)。プロによる有料作品と一般投稿の両輪、マンガやイラストなど、様々な統合策によって集客に成功し、200万以上の作品を集めている。そのうち何割が小説なのかは不明。
 別の風向きとして、「本物の」電子書籍の登場がある。専用端末やタブレット端末、スマホなどで、紙の本同様に読める作品データ規格が誕生した。最初のうちこそツールを使って個人で作るしかなかったが、やがてウェブ上で自動生成するサービスが始まった。大手からベンチャーまで、インディーズ電子書籍を販売する書店は今では結構ある。

 で、ここからが本題だ。(前置きが長すぎる)

 様々なネット小説の発表媒体が、登場しては消えていったわけだが、それらは小説の作者に全く利益をもたらさなかった。
 個人サイトで広告を貼った人はいただろうが、小説投稿サイトの収益はすべてサイト運営者のものだったのだ。作者が収益を得ようと思ったら、「プロ」として有料配信に契約するか、「夢のようなお話」をいただいて本を出すしかなかった。紙の本にしろ電子書籍にしろ、有料で売らなければ一円も入らないということだ。

 ごく最近そこに、「YOUは小説家」というサイトが登場した。
 発想が面白い。小説投稿サイトには違いないのだが、作者の手で自分の作品に広告が貼れるようになっている。広告会社に別サイトと認識させるためだろうか、作者ごとに違うドメインを割り当てているのだ。
 無料のマンガサイト、「Jコミ」(現・絶版マンガ図書館)と似ている。読むのはあくまで無料にして、作者には広告収益を、というわけだ。

 もしもこのモデルが広まれば、ネット小説の革命になる。また、この発想が進んで、電子書籍内に作者に収益をもたらす広告を入れることが出来れば、それこそ「出版の革命」になることだろう。
 こういうのは参加してみるのが面白い。私も一作、自サイトから移植してみたのだが……、誰もいない!
 作品数、たったの二本。私のが三本目だ。今これを書いてる時点で、十本掲載されている。耕されてない畑というか誰もいない海というか、とにかく、これからのサイトなのだ。
 風車に立ち向かうドン・キホーテを思い出すが、運営者には頑張ってほしい。負けるな運営者!


※ブログ小説やケータイ小説サイト、あるいはSNS型小説コミュニティについての話は、馬鹿長くなるので割愛しました。
14.07.21 16:38 コメント(1)

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